Trying out a Cello


 東京フィルハーモニー交響楽団で長年、主席を務められたチェリスト、
黒川三正さんに製作したチェロのご意見を頂いた。
やはり、第一線で活躍される方のボウイングで鳴らすと、しっかりと楽器の核が見えてくる。

チェロはバイオリンとは全く違う音質が求められる。
ただ音域が低いというわけではない。

 「Viole da braccio」(複数形)という呼称でバイオリンと一括りにされて、楽譜に指定されていなかったり、「Violone」という呼称でビオローネ・ダ・ガンバとチェロのどちらを指すのかはっきり区別されていない時代から、1600年代後半に入ると「Violoncello」という呼称が用いられ始め、はっきりとチェロという楽器の”個性”が意識され始める。その裏には、1600年代後半にチェロの低弦に金属巻線が用いられるようになり、小型化され、よりソリスティックに音が変化を遂げ、ボローニャ派の作曲家が積極的にチェロを主体にした曲を書き始めた事があるのだが、
まさにこの時から、チェロ独自の音が求められるようになる。

  チェロの音質はモデルによる影響がかなり大きい。
地鳴りのするような低音に、遠くまで抜ける鼻にかかったような高音。
金属的な低音に、ふくよかな高音。
演奏家によってチェロに求める音にかなりの違いはあるのだが、
過去の製作家のモデルを見ると、ニーズに合わせるための過激なまでの試行錯誤が見て取れる。
そして、それは400年経った今でも試行錯誤が続いている。
更に厄介なことに、チェロは構造上、音量がとても大きいので、
そばで聞いても、自分で弾いても、音質の判別が難しい。

チェロは演奏家と製作家の二人三脚が無ければ決して作れないのである。





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