Golden Ground  黄金の下地


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 楽器が白木で仕上がると、直ぐにニス塗りに入ると思う方も多いだろうか。
実はその前にとても大切な作業がある。  下地の処理である。 英語ではGroundと呼ばれる。
下地の処理には様々な目的がある。

・木を美しく染め上げ、ニス塗装後の美観を向上させる為
・木の反射率・屈折率を向上させる為
・杢目を綺麗に浮かび上がらせる為
・ニスの木への浸潤を防ぐ為
・木の硬化を期待する為、etc...

製作家によって目的も方法も様々だ。下地の処理を殆どしない製作家もいる。
ニスは製作家ごとに様々なレシピがあり、そのレシピは秘密にされることも多く、大っぴらには語られることは少ないが、実は下地の処理についても、製作家は秘密にすることが多い。
寧ろ、下地の処理について尋ねる事の方が、タブー視されることもある。
かく言う私も、この下地のレシピに行く着くのにかなりの時間を要したため、あまり気軽に他言することはない。

 ではクレモナの銘器たちはどうか。それは、はっきりとは解っていない。
同じストラディバリでも、木がしっかり染まっている楽器もあれば、ほとんど染まっていないものもある。 比較的初期にニスが禿げたであろう部分だけ木が染まっていない事もあれば、ニスがないところも同じ色に染まっていることもある。
楽器ごとに下地の処理が違っていたのかもしれないし、下地の処理は殆どされておらず、楽器それぞれの経年変化によって違いが生まれているのかもしれない。
科学的な解析をしても、はっきりとした断定できる成分は今のところ何も検出されていない。
つまり何も解っていないのである。
しかし、銘器たちに共通して言えることは、しっかり杢目が染まっていても、
屈折率が高く光の角度によって大きく変化し、道管や髄線などが汚れておらず、
反射率が高くとても綺麗なことだ。

私のレシピは3日程掛けて施される。
木の中で起きていることをイメージしながら。銘器への憧れを抱きながら。





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